部分否定

部分否定
部分否定は、全体や頻度を否定することで生成される

松野町夫 (翻訳家)

「すべてが~ではない」とか「常に~とはかぎらない」のように、文全体ではなく一部を否定することを部分否定(partial negation)という。これに対して、全体を否定することを全体否定(total negation)、または全部否定、全否定という。部分否定や全体否定は、おそらく世界どの言語にもあると思う。

日本語の場合、部分否定には助詞「は」が欠かせない。「は」は一般に、その直前の語を他と区別して確定したものとして問題化するという機能がある。具体的には、「は」は主題、対比、限度、焦点を示す。この四大機能のうち、焦点(focus)は、「は」が文のどの部分(語句)に焦点を当てるのかを示す。部分否定では、この焦点機能が否定の焦点を示し重要な役割を演ずる。

部分否定は一般に、以下のような語を否定することで生ずる場合が多い:

全体を意味する語: すべて、全部、全体、全員、完全、両方
頻度を意味する語: たまに、ときどき、頻繁に、いつも、常に、毎日
必然を意味する語: 必ず(必ずしも~ない)、かぎる(~とはかぎらない)

全員が行かない。 → 全体否定 (誰も行かない)
全員行かない。 → 部分否定 (多くは行くが、一部は行かない)

両方ともいらない。 → 全体否定 (ふたつとも不要だ)
両方いらない。 → 部分否定 (片方だけほしい)

太郎は、毎日休まなかった。 → 全体否定 (全然、休まなかった)
太郎は、毎日休まなかった。 → 部分否定 (休みが多かったが、たまには行った)

金持が幸せとかぎらない。→ 部分否定
優秀な選手が必ずしも名コーチになるとかぎらない。 → 部分否定
事態は必ずしも楽観できない。 → 部分否定 (見通しは明るいが、油断は禁物)

英語の場合も同様に、部分否定は以下のような語を否定することで生ずる場合が多い:
all (すべての), every (すべての), everybody (みんな), everything (すべてのもの), always (いつも), necessarily (必ず), both (両方) などの類。

以下の英文およびその訳文は、いずれも部分否定である(ただし会話体の疑問文は除く)。

Not all men are wise. すべての人が賢いとはかぎらない。
Not all children like apples. すべての子供がリンゴが好きだとはかぎらない。
Not all policemen are brave. 警察官だからといってみな勇敢だとはかぎらない。
Not all people are as kind as you are. 誰もがあなたのように親切なわけではない。

Not every man can be a hero. 誰もがみな英雄になれるわけではない。
Not every teenager likes pop music. ティーンエイジャーがみなポップスを好きとはかぎらない。
Not every rare book is a valuable book. すべての希少本が価値があるというわけではない。
A: Do you buy lottery tickets every week?  宝くじ券は毎週買うの?
B: Not every week. 毎週ではないよ。

Not everybody can do it. 誰にでもできるわけではない。
Not everybody can be a hero. 誰もが英雄になれるわけではない。
Not everybody can act so bravely. 誰もがそんなに勇敢に行動できるわけではない。
But everybody can’t go to Harvard. でも、誰もがハーバードへ行けるわけではない。

Money isn’t everything. 金がすべてではない。
Beauty is not everything. 美がすべてではない。
You cannot have everything. 何でもみな手に入るわけではない。

You're not always right. 君がいつも正しいとはかぎらない。
We’re not always this busy! いつもこんなに忙しいわけではない。
The rich are not always happy. 金持が常に幸福とはかぎらない。
I'm not always free on Sundays. 日曜日がいつも暇であるとはかぎらない。
Things won't always go as planned. 物事がいつも計画通りに行くとはかぎらない。

That is not necessarily true. それが必ずしも真実とはかぎらない。
Bigger is not necessarily better. 大きければいいというものではない。
You don't necessarily have to attend. 君は必ずしも出席しなくともよい。
The rich are not necessarily happy. 金持が必ずしも幸福とはかぎらない。
That conclusion doesn't necessarily follow. その結論は必ずしも出てこない。

Biggest doesn’t necessarily mean best. 最大が必ずしも最善とはかぎらない。
Seats in the front row are not necessarily the best. 前列の座席がベストとはかぎらない。
The more expensive items are not necessarily better. 高ければ高いほど良品とはかぎらない。
A: Is it always so difficult? いつもこんなに難しいの?
B: Not necessarily. そうとはかぎらない。

I don't know both. 両方は知らない(片方だけ知っている)。
I don't want both books. 2冊両方はいらない。(1冊でいい)

► both の否定は部分否定を表わし、全体否定を表すことは滅多にない。
全体否定には、both の代わりに、either や neither を使うのが普通。たとえば、

2冊両方ともいらない。 → 全体否定
I don't want either book. → 全体否定
= I want neither book. → 全体否定

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