喫煙てそんなに悪いことなの?

喫煙てそんなに悪いことなの?

松野町夫 (翻訳家)

タバコは、茶・コーヒー・酒・菓子などと同じ嗜好品(luxuries)なのに、このところタバコに対する風当たりは格別に厳しい。「喫煙は健康に悪い、即刻やめるべきだ。タバコの煙は、吸わない人の迷惑になる。高学歴の人はタバコなど吸わない」と多くの人が言う。禁煙推進の動きは世界的な風潮となり、「タバコは健康に悪い」は現代人の常識となっている。しかし現代人の常識かもしれないが、良識だとはとても思えない。現代の禁煙推進の動きは少し行きすぎていると私は思う。こんなことを言うと、「タバコは健康に悪い」ということは科学的にすでに証明されているではないか、と反論されそうだが、そうした科学的根拠をひとつひとつ確認してみると、意外なことに、喫煙は格別に健康に悪いとはいえないようだ。特に、「タバコを吸うと肺がんになる」は俗説にすぎず、科学的根拠はない。行きすぎたタバコ害悪説は、「マリファナよりタバコのほうが身体に悪い」とかいうような誤まった情報を蔓延させることにもなり、社会にとってもむしろマイナスになりかねない。

私は愛煙家。祖父も父も母も兄もスモーカーだった。1960年代頃までは、日本でタバコを悪くいう人はあまりいなかったと思う。むしろ当時、タバコは大人の象徴であり、かっこいいものであった。タバコはぜいたく品で、タバコの煙にはどこか文化的な香りがした。男性への贈り物でもタバコは定番であった。日本専売公社(=日本たばこ産業)が、昭和32年(1957)に発表したポスターのキャッチフレーズ、「今日も元気だ たばこがうまい!」は社会的に広く共感をよんでいた。現在93歳になる母がタバコを吸うようになったいきさつを、ずっと以前に話してくれたことがある。乗り合いバスのなかで隣席の男性の吸うタバコの煙が母のところに流れてきたそうな。母はその香りにうっとりし、どうしても一度吸ってみたくなり、自宅で父のタバコをこっそりと吸ってみたところ、病みつきになり、それから人に隠れて吸うようになった。当時、田舎ではタバコを吸う女性はほとんどいない。あるとき、父に見つかり、叱責されるかと思いきや、「そんなに吸いたいのなら、隠れて吸うことはない、堂々と吸えばいい」と認めてもらったと、母は楽しそうに昔の思い出を話してくれた。

母の話からわかることがふたつある。ひとつは当時はバスの車内で喫煙できたということ。もうひとつは社会的な認知(常識・通説)が人の嗅覚・味覚に影響するということ。「隣席の男性の吸うタバコの煙が母のところに流れてきた」という表現は、現代風に言うと「副流煙」であり、母は「間接喫煙」したことになる。「副流煙」や「間接喫煙」はマイナスのイメージを持った新造語であり、現代社会では、副流煙を母と同じようにうっとり感じとることはもはや絶望的である。多くの人は副流煙を不快に感じ、なかには気分が悪くなったり、吐き気をもよおしたりする人もいるかもしれない。なぜか?それは、タバコの煙が物理的に人体に悪影響するというよりも、社会的・心理的な要因によるケースが大きいといえる。ことばの持つ「暗示力」のなせるわざでもある。昔から、「鰯(いわし)の頭も信心から」というが、あれと同じ原理である。現代人は「タバコは健康に悪い」と信じ込み、その常識に洗脳されているのだと思う。

東京大学名誉教授で解剖学者の養老孟司さんが、「たばこの害や副流煙の危険は証明されていない」「禁煙運動家はたばこを取り締まる権力欲に中毒している」などと月刊誌「文芸春秋」2007年10月号の対談で発言した。これに、日本禁煙学会が激怒。「たばこが害だという根拠が無い、という根拠を示せ」と2007年9月13日に公開質問状を出したという。J-Cast のこの報道に対して、喫煙者、嫌煙者双方から2224件のコメントが寄せられていた。

「タバコは健康に悪い」は、ほんとうに科学的にすでに証明されているのだろうか。

国立がんセンターがん対策情報センター『喫煙と肺がん』(2003年)によると、日本では20~24歳の男性が喫煙を開始して肺癌を発症して死亡するのは人口10万人あたり114.0人で、非喫煙者は24.1人。つまり、喫煙者の肺がんによる死亡率は0.114% ということ。しかし、これは統計学的には意味のない数値である。統計学では通常、有意水準(危険率)は5%、まれに1% という場合もあるという。いずれにしろ、0.1% 程度の確率ではとても、喫煙と肺がんとの間に因果関係があるとはいえず、「タバコを吸うと肺がんになる」は単なる俗説にすぎず、科学的根拠などないことがわかる。以前から喧伝されている肺がんですらこの程度の話なのであり、これ以外のがんについては推して知るべしであろう。

日本人男性の喫煙者の肺がんになる確率は非喫煙者のそれよりも約5倍高いという。確かに、上記の肺がんの死亡者数の、喫煙者114人と非喫煙者24.1人を計算するとそうなるが、もともと統計学的に意味のない数値をベースにしての話にすぎない。以前、『統計でうそをつく方法』という本が出版されたことがあるが、「喫煙者の肺がんになる確率は5倍高い」という説はそれを思い出させる。直接喫煙でもこの程度の数値なのだから、副流煙にいたっては論ずるまでもないと私は考えている。

厚生労働省のウェブサイト
http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/qa/detail1.html
に、「喫煙と健康問題について詳しく理解したい方のために」というページがある。

Q 喫煙者本人への健康影響(がんへの影響)について

A  喫煙男性は、非喫煙者に比べて肺がんによる死亡率が約4.5倍高くなっているほか、それ以外の多くのがんについても、喫煙による危険性が増大することが報告されています。また、喫煙は世界保健機構(WHO)の国際がん研究機関(IARC)において発がん評価分類でグループ1(人間に対して発がん性あり。人間に対する発がん性に関して十分な証拠がある)に分類されています。
(以下、省略)

そこで、国際がん研究機関(IARC)の発ガン性評価方法のサイトを以下に記載する。
http://www.kepco.co.jp/emf-k/senmon/iarc.htm

●国際がん研究機関とは・・・
 1969年、国際がん研究機関は人への化学物質の発ガンリスクの評価と、個々の化学物質に関するモノグラフ(専門書)を作るために発足しました。その後、化学物質の混合物や放射線、ウィルスなどの化学物質でないものも評価するようになりました。

 国際がん研究機関の発がん性評価は、その物質の発がん性の証拠の程度について分類したものであり、発がん性の強さを評価したものではありません。ここでの評価プロセスは、まず、人に対する証拠と動物に対する証拠を別々に評価し、その結果をもとに発がん性分類への総合評価を行います。総合評価の発がん性分類には以下の5つの分類があります。また、これらの評価は、規制や法制化に対する勧告を示すものではありません。

●発ガン性分類表
グループ 1: ヒトに対して発ガン性がある(carcinogenic to humans)
コールタール、アスベスト、喫煙、アルコール飲料、カドミウム、ダイオキシン
(以下、省略)

文中の「国際がん研究機関の発がん性評価は、その物質の発がん性の証拠の程度について分類したものであり、発がん性の強さを評価したものではありません」、「これらの評価は、規制や法制化に対する勧告を示すものではありません」、「喫煙、アルコール飲料」という文言に注目し、私なりに解釈すると、

喫煙は、発がん性評価のグループ1に分類されているが、この分類は発がん性の強さを評価したものではなく、(それはそうでしょう、喫煙とアスベストが同じ強さのはずがない)「タバコを吸うと肺がんになる」という説を直接、科学的に裏付けるデータではない。これらの評価は規制を勧告するものでもない。もし、この評価から「喫煙は健康に悪い」というのであれば、アルコール飲料も健康に悪いということになる。昔から、日本や中国では「酒は百薬の長」という。もちろん、タバコにしろ、酒にしろ、過剰な摂取は健康に悪い。結局、その程度の話なのである。

ちなみに喫煙率は、WHOの資料(2002年)によると、中国 35.6%(男66.9、女4.2)、韓国 35.0%(男65.1、女4.8)、スウェーデン 19.0%(男19.0、女19.0)、米国 23.6%(男25.7、女21.5)とのこと。日本の成人の喫煙率は、JTの資料(2009年)によると、24.9%(男性38.9、女性11.9)とのこと。

禁煙は世界的な潮流となった。喫煙場所は毎年減少し、禁煙エリアは拡大の一途をたどる。飛行機、電車、地下鉄、公共施設、病院などはもちろん禁煙だ。私とてこれに異を唱える気持ちはない。しかし、屋内はともかく、屋外にまでも禁煙エリアが指定されるようになったのはどうかと思う。実際、阿佐ヶ谷の駅前広場も分煙化され、喫煙場所は広場の片隅に追いやられている。杉並区や文京区などは、路上での歩行喫煙を禁止する条例を制定し違反者には罰金を科す。阿佐ヶ谷のケヤキ通りの周辺道路には「過料2000円」の標識が路上にペイントされている。

平成21年10月1日から
路上禁煙地区の喫煙行為に対して
過料2000円徴収します

でも、これって少しやりすぎだと思いませんか?

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 6

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック